審判員講習会の会場に着いた瞬間、どこかいつもの稽古場とは違う空気が漂っていた。
張り詰めた緊張感と、参加者の真剣な表情。
その中に――一際目立つ人の背中があった。
栗原先生。
長年多くの選手を導き、多くの大会で要の審判を務める、あの存在感。
栗原先生を神奈川県本部にお招きしているとは言え、特別な感情が湧いてくる。
講習が始まる前に、先生がふとこちらを振り返り、軽く会釈してくれた。
──今だ。
胸が少し高鳴りながらも、自然と足が前に出ていた。
「栗原先生、もしよろしければ、一緒に写真を撮らせていただけますか?」
声が少し上ずっていたかもしれない。
だが先生は、あの柔らかい笑顔で、
「もちろんですよ。」
と気さくに応じてくれた。
シャッター音が鳴った瞬間、何かが胸の奥でストンと収まった。
憧れの人と並んで写った一枚の写真以上に、
その瞬間にこもった「これからもっと成長したい」という気持ちの方が大きかった。
講習が始まると、技の見極め方、反則の判断基準、そして“正しい眼”を持つための視点。
先生の説明はどれも的確で、ひとつひとつの言葉に重みがあった。
その度、心のどこかで「本当に来ていただいて良かった」と思った。
帰り道、その写真を何度も見返しながら思った。
――今日のこの一瞬が、また新しいスタートになる。




