
青空空手で
子どもたちに
強い心を!

空手を通じて、子どもたちへ。
神奈川の空手師範が、空手教室をボランティアで続ける理由とは。

空手教室を通して、子どもたちに相手を思いやり、認め合う心を伝えています。
技術よりも、人としての在り方を。
ボランティアで空手教室の師範をしています。いまは生徒の人数も増えて中学校の道場を借りていますが、始めた頃は公園を会場にした「青空空手」でしたね。
空手の技術を教えるのは勿論ですが、武道を通して精神を鍛えたいというのが、青空空手教室を始めた当初からずっと変わってないぼくの想いです。
だから、来てくれた子どもたちに、メッセージを伝え続けている。具体的には、技術を教え終わって、生徒たちと向かい合って礼をした後に、私から話をするん です。そこではもう技術の話は一切なしにして、人としての在り方というか、例えば挫けそうなときはどういう心持ちになればいいだろうか、だったり、辛そう な友達がいたら、必ず声をかけてあげよう、ということだったり。
それも、私から一方的に話すというよりも、子どもたちに質問したり、子どもたちにも質問させたりと、会話しながら一緒に考えるようにしていますね。
学校では、答えがわからないと手を挙げられなくて、自信をなくしてしまうようなこともあると思うんです。だから私の教室では、すごく簡単なことでもあえて 質問してみて、答えられる環境をつくったりしている。そういったことからも、自信を持つきっかけになってほしいな、と思っています。
親や教師以外の大人に触れ合う機会を。
教室の生徒は小・中学生が中心ですが、幼稚園ぐらいの子もいれば、大人もいます。そして、大人と子どもでクラスを分けてないので、みんな一緒にやるんです。
ボランティアなので、大人の方々からも会費をとらない。その代わりに、子どもたちに明るい表情を見せてあげてください、とお願いしています。
子どもにとって生きやすい環境って、周りに明るい大人がいるかどうかが結構大切だと思うんです。だから、すごく明るく、すごく頑張って、すごく悔しがったりしてる姿を見せてあげてください、と。そんなことを月謝代わりに教室に還元してもらってるんですね。
それと、僕らが中心に指導するのは子どもたちで、大人のみなさんには直接は教えないことになっています。大人なので、前で僕らが子どもたちに教えてるのを見て、ご自分で学んでくださいね、と。
そうすると、大人が子どもに教わる場面も出てくる。子どもたちにとって、自分の親ではない大人に教える機会はすごくワクワクするものだし、自信につながり ます。そういう、親以外の地域の大人と触れ合える機会をつくってあげることも、子どもたちが生きやすい環境づくりに役立つと思っています。




いじめ自殺のニュースをきっかけに、自分に何ができるかを本気で考えました。
1人の少女の自殺が、自分にできることを探すきっかけに。
きっかけは、テレビのニュースで、女子中学生のいじめ自殺のニュースを見たときでした。僕が29歳のときだったと思います。それ以前も、休日に何もしない 生活に違和感はあったんです。それがもう、このタイミングでカチッとはまったような。彼女のような子を増やさないために、何ができるだろうって本気で考え 始めました。
最初は空手じゃなかったんです。子どもたちの住む地域を良くすることなら自分にもできるなと思って、家の近くの公園の掃除から始めることにしました。
掃き掃除をしていく中で、昔やっていた空手を教えるのはどうか、とふと思い立ちました。武道は精神を鍛えるものですし、自分がやっていた頃はその本当の良 さもわかっていなかったような気がするので、もう一度きちんと向き合ってみよう、という気持ちもありました。
それから毎日、仕事から帰ったら独自で空手の型、技を練習し直して、1年後に青空空手教室を開始したんです。
何度もやめようかと思った。それでも諦めたくなくて。
はじめは生徒が全然いなくて、正直やめようと思ったことが何度もありました。でも僕の目的は、空手教室を大きくして、強い選手を育てたい、ということじゃなくて、子どもたちにメッセージを伝えること。
目の前に1人でも生徒がいれば、その子が未来に僕の意志をつないでいってくれる。その信念を曲げたくなくて、やめなかった。
ビラを作って配ったり近くのスーパーに貼ってもらったりと、とにかく必死に活動を続けました。そうしたら、知り合いの方から中学校の多目的ホールが借りられるらしい、みたいな情報をいただいたりして、少しずつ前進していけたんです。
いまでは、生徒はのべ200名を超えるまでになりましたが、あの頃の、あの子たちがいてくれたから、こうして今の僕につながっていると思っています。本当にありがたいですね。



想いがバトンのようにつながっていき、僕の活動をここまでつないでくれています。
教え子たちから届く、メッセージ。
僕はいつも、生徒たちに言葉を投げかける。時には手紙を書くこともあります。でも、この言葉が結果的に、これまでに誰か1人でも救うことができているのか、それは正直なところわからないです。
それでも約13年間続けてきて、生徒や卒業生から手紙や年賀状をもらったりすることがあるんです。学校の卒業文集にぼくのことを書いてくれた、なんてこともありました。
そんな、生徒たちが書いてくれた言葉を見ると、少なくとも彼ら、彼女らに、僕の言葉が届いているのかもしれないな、と感じることができる。子どもたちのメッセージが、僕が落ち込んだりしたときにも元気をくれるんですよね。
それから私には家族がいますが、この活動は家族の理解がないと続けるのは難しいんです。月曜から土曜まで仕事で、日曜は空手教室に行くわけですから。
でも、生徒たちが手紙や年賀状に書いてくれた言葉のおかげで、それを見た妻が、僕がやっていることは確かなんだな、ということを納得してくれる。そうやって、いまの僕の活動はつながれているんです。
つながりは、自分から子どもたちへ。そしてコミュニティへ。
そうやって、メッセージを送り続けてきた僕に、子どもたちが言葉を返してくれる。それだけじゃなくて、親同士もつながっていて、もうコミュニティになってるんですよね。
そして、いま思うと、ぼくの親や、空手をやっていた頃の師範の教えも何かしら残っていて、つながってきている。そのことにすごく感謝してますし、バトンをつなぐってまさにこういうことだなって、そう思います。
僕がいなくなっても、僕の意志をつないでいってほしい。
この道場もそうだし、道場から出て、家庭や学校や、社会に出ても、道場で学んだこと、感じたことをつないでいってほしい。それが、どこかで誰かを救うことになっていくと信じています。

東京2020オリンピック聖火ランナー決定サプライズ
東京2020オリンピック聖火ランナーの決定通知の際に、地元のみなさんにご協力いただき、サプライズを行いました。
サプライズにご協力いただいた方々や、田中さんの地元チャレンジを見守り、応援し、支えているみなさんからのメッセージやコメントを掲載します。

空手教室のみなさん、ありがとうございました!